UnBooks:架空の人物
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- 私はときどき、自分の存在が疑わしくなる。
- そもそも私は存在していないのではないだろうか?
- 「バカなことを」と、私を知る者は言う。
- 「知る」といっても、私がどんな人物なのかを正確に把握しているという意味では決してない。
- おそらく彼らにとって私は、ギャンブルの賞金のように「もしかしたら在る」という存在でしかなく、
- 楽観的な先入観によって私の本性を捉えることができないでいるのかもしれない。
- いや、そうではなく、きっと私にアイデンティティというものが無い所為ではないのだろうか?
- 私は、自分の挙動が疑わしい。
- なぜ私は、朝刊のタイトルだけを覚えて職場で話題の種にしようとしているのだろう?
- なぜ私は、興味も無いのに昨晩のプロ野球の戦局について他人と話しているのだろう?
- なぜ私は、ウソだったという報道があってから好きな納豆を買うのをやめたのだろう?
- 私は、自分の知能が疑わしい。
- なぜ私は、推定無罪の原則を知りながら河野義行氏が悪人に見えてしまったのだろう?
- なぜ私は、メキシコ以外の国から死者が出ていない事について何も考えないのだろう?
- なぜ私は、Deep Loveの映画版に涙して原作小説に定価どおりの金を払ったのだろう?
- 私は、自分の立場が分からない。
- 本当に私は、リサイクルにかかるコストを比較衡量しなくてよいのだろうか?
- 本当に私は、空気自動車を差し置いて電気自動車に期待してよいのだろうか?
- 本当に私は、ひたすら消費者側に対して性善説を唱え続けてよいのだろうか?
- 私の行動は常に、他者が製作したプログラムによって定められている。
- 私は誰とも、心から許しあえる関係を作れないけれど、
- 私は、他人なしではとても生きられない。
- どんなに私の名が騙られようが、
- どんなに私が悪人扱いされようが、
- 私は、「公的な自分」という存在に抵抗することは叶わない。
- 今ようやく、自分の個人的嗜好を思い出した。
- 公的な場では、私はジャニーズやB'z、サザンオールスターズが好きだが、
- 本当はザ・ベンチャーズやT-SQUAREのボーカルを賛美したい。