UnBooks:事業仕分けられ
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この記事は仕分け対象となりました。
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昨今の不景気で給与は上がらんし、家に帰っても息子らは俺にまともに相手にしない。私は職場でもプライベートでも肩身の狭い40代のサラリーマン護。妻の加代子はパートに出て稼いでいるが、それでもやりくりが大変そうだ。俺も稼ぎを増やして助けてやりたいのだが......
久しぶりに親子4人で一緒に夜食。テレビのニュースを見ると「事業仕分け」なんてのが始まったらしい。そのやり取りが面白い。役人をバサバサ切っていくのは何とも爽快な気分だ。がんばれ、蓮舫議員。俺は何気に応援しているぞ。すると妻が突然変なことを言いだした。
「そうだ。私も事業仕分けをしよう」
地獄の始まりだった。
第一幕[編集]
今日も残業。子どもらは完全に寝静まり、抜き足差し足しながら家に帰る。ダイニングを見ると妻が険しい顔をして家計簿を見ている。私はそっとダイニングに入る。
- 加代子:ちょっと座って。話があるんだけど。
- 護:(ちょっとした間)あぁ...なんだ。
- 加代子:今やりくり大変なのは分っているでしょう?
- 護:あぁ...
- 加代子:私はね。がんばって節約しているの。チラシを並べて一番安いスーパーを見つけて買い出しに行ったり、こまめに電源を切ったり。だけどね、あなたは全然そんなこと気にしていないよね?
- 護:そんな事ない。
- 加代子:だからね。民主党さんも事業仕分けしているでしょ。私もそれをしようかと思うの。そしたら、あなたも私がどれだけやりくりに困っているか、分ってもらうの。
- 護:いや、加代子が苦労してるのは分るけど....
- 加代子:いいえ、分っていません。さっ!事業仕分けを始めるわ。
- 護:ええっ?....どうやって?(内心、いやな予感がする)
第二幕[編集]
- 加代子:まず、私の家計簿を見てもらいたいの。
- 護:おう
- 加代子:まず、ローンが3450万円もたまっているの[1]。けど、私たちの収入は30万円しかないの。なかなか返せそうにはないわ。
- 護:.....がんばらないとな...
- 加代子:何のんきなことを言っているの!あなたが都心のマンションを買いたいって言うからでしょ!
- 護:.......
- 加代子:ローン返さなきゃいけないのに、お金がないから月13万円も借金をしている。これだといつまでたっても借金は減らないじゃない!
- 護:..............(何も言えない)
- 加代子:まず、あなたのお小遣いを減らすわよ。月3万5千円だっけ?5000円減額するわ。
- 護:ちょっと待て、3万4000円だ。
- 加代子:それでも5000円減額するわ。
- 護:ただでさえ昼飯は牛丼で済ましているのに......
- 加代子:キャベツ焼きにすればもっとお得よ。はい、5000円カット。
- 護:ちょ....俺の話を聞いてくれ!一方的に話さないでくれ!
- 加代子:何?
- 護:俺はいつもまずい社員食堂で昼をすましているんだ。後輩社員と肩を並べてな!俺の同期の田中[2]なんてたまに....
- 加代子:それはただ単にあなたの実力不足でしょ。自分の事を棚に上げといてよくそんなこと言えるわね。
- 護:(絶句)
- 加代子:本音を言うとあなたの小遣いなんてナシにしたいのよ。けど、ちゃんと昼食代も込みの2万9000円だから。
- 護:(趣味代を減らさなければ......)
第三幕[編集]
事業仕分け2日目。今日は早めに帰れたから久しぶりに子供と遊べる.......かな?まず、遊んでもらえるだろうか。子供たちは眠そうにしながら僕たち夫婦の会話を聞いている。僕ら夫婦はいつもの四角いダイニングテーブルで「事業仕分け」をしている。
- 加代子:明音[3]の習いごとは正直厳しいわ。やめましょう。
- 護:あぁ...賛成だ。習いごとは正直見栄でやっていたようなもんだもんな。
- 加代子:光[4]の塾代どうする?まだ小学校だし授業数減らす?
- 護:ちょっと、さすがに子供の塾代はカットしたら駄目だろう。
- 加代子:成績が一番だから良いわけではないわ。
- 護:いや、そりゃ成績が全てではないけれども......
- 加代子:光は頭がいい子よ。だけど、一時的にトップを取る意味はどれくらいあるの。
- 護:ナンバーワンよりオンリーワンだと分ってるけど......
- 加代子:じゃあ、オンリーワンになるために塾は要らないわ。勉強なら家でも出来るわ。
- 護:中学受験が出来ないじゃないか。
- 加代子:高校受験で間に合うわよ。
- 護:(不満そうに)そうか......
- 加代子:はい、塾代20%カット。
- 光:(加代子に近づいてしゃべる)僕、友達と会えなくなる。
- 加代子:学校で十分会っているでしょ。
- 光:だけど、だけど.......
第四幕[編集]
事業仕分け3日目。正直、家に帰るのが怖くなってきた。気のせいか、妻の目つきが蓮舫と似てきている.......時計はもうとっくに0時を過ぎている。
- 護:ふう、これで「事業仕分け」も終わるよな。
- 加代子:まだよ。これ...なんとかならないの?
- 護:これって何だよ。
- 加代子:テレビの上に乗っている電車よ。
- 護:あぁ、これは...
- 加代子:あれ......諦めてもらいたいの。
- 護:俺、最近全然模型に手をつけていないぞ。
- 加代子:じゃあ、月刊「鉄道模型」を買うの辞めてもらえる?あれ、意外と高いのよ。
- 護:月950円くらい、いいじゃないか。それにあれは「鉄道模型趣味」だ。
- 加代子:ローンだってあるのよ。ちょっとした支出も切り詰めないと。
- 護:いや、駄目だ。あれは鉄分補給....じゃなくてセカンドライフを送るときのためにストックしておきたいんだ。
- 加代子:いやだわ。鉄道模型なんて。高いし、臭いし、汚いし。あなたが、鉄道模型さえ辞めてもらえば光を塾に行かせられるのに...
- 護:(卑怯な手を使いやがってと思いつつ)おい、鉄道模型は俺の趣味なんだ、聖域なんだ。それを辞めたら......
- 加代子:今やりくりが大変なのよ!趣味だろうが、聖域だろうが関係ないわ。
- 護:鉄道模型は俺のロマンなんだ!あの小さな模型に電車のエッセンスの全てが凝結されているんだ!
- 加代子:そんなに続けたいの?なんならあなた自身も仕分け対象になるわよ。
- 護:加代子!それはどういう意味だ!?
結局、月刊「鉄道模型趣味」の購読は止められてしまった。話がヒートアップし鉄道模型の廃棄にまで及んでしまったが、護はなんとかそれを阻止した(ただし、鉄道模型は物置の奥底に移動させられた)。そして、加代子の事業仕分けは月2万円の削減に成功し、一定の成果を得て幕を閉じた。
あとがき[編集]
護は思った。事業仕分けを止めるには(家庭内での)政権交代しかない。だが、今まで自分自身が妻の事業仕分けで振り回されたのを見るととても実現できるかどうか不安だ。まず、子供たちの支持率を上げなければ、そう心に誓った護であった。
脚注[編集]
- ^ 出典:国の家計簿の現状は?財務省の言い分を信じるのか!?と突っ込まれたら困ります(これが一番分り易かった)
- ^ 護の同期。エリート大学で出世頭
- ^ 6歳の娘
- ^ 10歳の息子
関連ニュース[編集]
- スパコン予算カット
- 私の話を聞いてください
- 事業仕分けまとめ
- 主夫のすすめ
- 節約夫の超ドケチ伝説(すぎうらゆう) - 彼女は夫ののぶちーに世の奥様方にも負けない超スパルタ級の事業仕分けをされている。
![]() 本項は第10回執筆コンテストに出品されました。
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