オープンイノベーション

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オープンイノベーション(英: open innovation)とは、自社の価値を毀損せずに他の会社の力を借りて新規事業を起こすビジネス手法である。

概要[編集]

近年諸外国に比べて新規事業などの「イノベーション」起こしの面で遅れを取っていた日本のビジネスシーンにおいて、その遅れを取り戻すべく、「すでに一定の完成度を持つベンチャー企業の事業」を活用してイノベーションを起こそうとする手法である。活用手段としては「子会社化」「業務提携」「資本提携」の3種類がある。

背景[編集]

従来、日本の事業会社は、自社に設けた研究開発部門や、「社内ベンチャー」制度を設けて人材を囲い込んで新規事業の立ち上げや新製品開発、新規顧客の開拓などを行っていた。これは「クローズドイノベーション」と呼ばれる。

しかし、2010年代になると、近代化が進み過ぎて新規事業を立ち上げる余地が少なくなったり、新規に顧客開拓したくても他の会社に囲い込まれているために開拓が困難になっていたり、新しい製品を開発しても古い製品との差別化に苦しみあまり売れずに市場から消えゆく製品ばかりになってしまい、2010年代後半になると「1:5の法則」や「5:25の法則」[1]という「新しいことはしないほうが良い」というマーケティング用語がビジネスの世界で席巻するようになってしまい、イノベーションが起きづらい状況に陥っていた。

日本の事業会社の人事もその状況を後押ししており、近年の日本の大企業の重役層は「新規事業や新規顧客開拓で結果を出した」人がほとんどいなくなり、「リストラで成果を出した」「社内の調整で結果を出した」人が大半を占めるようになっていた。そのような人事が行われるため、日本企業で将来の出世を期待する「幹部候補」は、出世の足を引っ張る「失敗の経歴」を積ませないよう、新規事業や新規顧客開拓に充てられない(充てたとしても1年以下の短期間である)傾向が強まり、日本企業の新規事業や新規顧客開拓、研究開発担当は「出世意欲がない人達」の溜まり場[2]になってしまい、ますますイノベーションが起きづらい状況となっていた。

しかし、世界に目を向けるとイノベーションは常にどこかで起きてる状況であり、このままでは日本が先進国の座から落ちてしまう危険性がある。そのため、日本の事業会社は先ず「中途採用」を強化して外部から風を吹かすことでイノベーションを起こそうと試した。しかしその中途採用者は「出世意欲がない人達」と一緒に仕事をする状況であったため、最初は目を輝かせて成果を出そうとしても1年も経てば組織の厭戦的雰囲気に巻き込まれてしまい、その中途採用者に数年で出ていかれてしまう状況が相次ぎ、中途採用強化によるイノベーション起こしは上手く行かなかった。

そこで考案されたのが、人単位で外部に頼るのではなく、企業単位で外部に頼る手法である「オープンイノベーション」である。

オープンイノベーションのメリット[編集]

オープンイノベーションは、日本の既存の事業会社に以下のメリットがある。

1から事業を立ち上げなくてよい
大きなポイントの1つ。事業会社が新規事業を立ち上げる場合は、ターゲットとなるマーケットの規模がどれくらいか、技術的に可能か、初期コストがどれくらいかかるか、資金調達計画はどうするか、何年で事業化でき、何年で黒字化できそうか、営業戦略はどうするか、法的課題はあるのかないのか、事業化のキーマンは誰であるか・・・など、非常に多くの準備・調整タスクが必要となり、事業計画書を作るだけで半年以上の期間がかかることが珍しくない。また、苦労して事業計画書を作っても、保守的な役員の鶴の一声で事業化が見送られることも珍しくない。
それらの関門をすべてクリアして事業開始にこぎつけたとしても、技術課題などが目論見通りクリアできずに事業化に何年もかかって商機を逸したり、マーケット規模が予想に反して小さくなったりライバル会社に出し抜かれて黒字化の目途が永久に立たなくなったりするなど、「100回に1回当たれば良い方」とすら言える状況である。
一方オープンイノベーションは、すでにそれらの課題を大体クリアしたベンチャー企業が立ち上げ済みの事業を活用できるのが強みである。ただしベンチャー企業が起こしている事業は「法的課題」がクリアできてない事が多く、活用開始後しばらくしてから法律面で躓くこともある。
いざとなったら自社に悪影響を出さずに切り捨てられる
オープンイノベーションの最大の強みがこれである。クローズドイノベーションでは新規事業が失敗した場合、最悪自社の人材をリストラしないといけなくなる。2017年に新規事業を全部リストラし、大量の失業者を生み出した三越伊勢丹ホールディングスが好例。リストラ後は削減した人材を使って事業の立て直しを行う必要があるが、リストラにより毀損された企業イメージの回復から始めないといけないため、苦しい企業運営が強いられることになる。一方、オープンイノベーションでは、ダメだったら活用している会社だけを切り捨てればよく、企業イメージの毀損がほとんどないので、自社に発生する影響は最小限にとどめられる。
面接相手が実質数人で済むなど、人的リソースの調達がきわめて簡単
仮に中途採用者を集めて新規事業を起こそうとする場合、何十人~何百人もの採用候補者と面接を行わないといけないが、オープンイノベーションでは、活用する企業の役員・社長の数名だけ面接すれば十分である。また、その事業に必要な人材の調達や配置は、活用する企業側で勝手にやってくれる。人集めと言う点でもオープンイノベーションはクローズドイノベーションに比べて大きく勝っているのである。
ベンチャー企業の創業者が大金を手に入れられる
「子会社化」の手法の場合、対象となったベンチャー企業の創業者と幹部に対して、「M&A金額」の名目で億単位の大金が支払われる。たとえその後事業の継続に失敗してもかなり長い期間暮らせることになり、これは創業者達が「事業をExitした」と表現される。

事例[編集]

DeNA
言わずと知れたイノベーション業界の雄。「MERY」などのキュレーション事業で結果を出し始めていた「ペロリ」社を子会社化し、インターネットにおける情報提供の仕組みを「人が汗水たらして入手した情報を説明する」方式から、「他人が作った成果をパクる」方式に変えるというイノベーションを起こそうとした。しかし「パクる」事については目標達成寸前まで行ったが、「WELQ」でパクっていた内容が医療法に抵触するような内容だったなど、法的課題をクリアできないまま事業拡大していったことがたたり、2016年秋に炎上。しかし、炎上はDeNA本体にはほとんど届かず、その1年後にプロ野球DeNAベイスターズが日本シリーズに進出すると、日本国内は一斉にDeNA礼賛モードに移行した。またキュレーション事業も小学館に実質的に譲渡するという損切りもスムーズに行えた。オープンイノベーションが会社を守った一例と言える。
上記以外では、日産自動車などと業務提携を行う方式で自動運転車の研究開発なども推進。事業の見通しが立たなくなったらいつでも縁を切れるメリットを生かし、ドライに事業開発を進めている。
ケータイキャリア3社(KDDI,NTTドコモ,ソフトバンク)
この3社は2000年代からオープンイノベーションにチャレンジしており、毎年のようにどこかのベンチャー企業を買収したり、業務提携を開始している。そのほとんどは結果が出ないまま人知れず消え去っているが、それによりこの3社のブランドイメージが損なわれることは起きていない。これもオープンイノベーションが会社を守った一例と言えるだろう。

脚注[編集]

  1. ^ 前者は「新規顧客開拓には、既存顧客維持の5倍のリソースが必要」、後者は「5%の既存顧客離れを防ぐだけで、25%利益が改善する」という意味
  2. ^ マツダのエンジン研究開発部隊のように、「なかなか認められずむなしいけど、給料もらえるからいいか」と思える人達を集めるのが良いとされている。

関連項目[編集]

Wikipedia
ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディア専門家気取りたちが「オープンイノベーション」の項目を執筆しています。